意識の旅

その時、地球は真実のメロディを奏でた

時の魔術師と真実のオカリナ

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飛行機に乗り、座席の窓から大地を覗いていると、雲の隙間から陸地が見え始めた。陸地は土の乾いたような質感を醸し出し、コロンブスが旅した記憶を、岩の細胞一つ一つに宿しているようだ。気まぐれな雲の群れが過ぎ去った後、延々と続く森が視界一杯に広がってきた。森の表面が大地を覆い尽くしている様子を見て、森の中には、人類の知らない精霊たちの物語が隠されているのだろうと想像するだけで心が躍る。しばらくすると気まぐれな雲がまた大地を覆い隠し、その謎に触れることは許されないと言っているようだった。その煽りは、隠された秘密の奥深さをますます感じずにはいられず、その謎めいた雰囲気を自力で継続させていると、心が少年のような振動を始めた。 

 

魔術師とオカリナ 

時の魔術師は新しいオカリナを口に咥え、生命達を蘇らせる音色をばらまいていた。動物や植物達はその音に反応し、しなやかさと潤いを取り戻し、新しい現実に歓喜していた。それはあらゆるエントロピーの法則を超越し、侵略された原住民の動画を逆再生しているようであった。時の魔術師はオカリナを吹き終わると、ポケットから3つのアーモンドを取り出し、1つずつ順番に口に運び、カリカリと頬張っていた。しばらくすると辺りが突然変わり始めた。それは現実感が薄くなるような、夢と現実の間に放り込まれたような感覚だった。

 

オカリナの音色はすぐ横の村にまで響き渡った。その結果、村の中での日常は大きく変わりはじめた。なぜなら、いままでが、いままでいられなくなったことを村民全員が直感的に理解したからである。川のほとりは自動的に人が集う場所となった。時間を観察する人や、白いキャンバスに色をにじませる人、様々であったが、誰もが快適さとリラックスの輪の中で、身をやさしく折りたたんでいることだけは共通していた。灯台の横にある階段を下った先にある祠には、毎日誰かしら訪れるようになり、常に清掃が行き届くようになった。花瓶は季節の花と共にあり、祈りをするためのスペースが作られた。

 

オカリナの音色が村に響き渡る前、村長の息子は悩んでいた。高齢である父が亡くなった後に村をまとめるあげる自信がなかった。それ以外にも、いつも頭の中はなにかの問題で満ち溢れていた。オカリナが新しい現実を映しはじめてからは、早朝の散歩を日課にするようになった。朝日を眺め、草の音を聞き、水の匂いを味わっていると、全ての問題は、ただ自分自信に正直でいることで解決されると風が教えてくれた。それから村長の息子は、村長の息子としてではなく、村長の家で生まれた1人の男として、ただ自分が必要だと感じることだけをやり、腑に落ちないことは全て保留にした。知らない時には知らないと言い、困った時には困っていると言った。不思議なことに、そうしていると、必要な時に必要な人が現れ、すべての問題は一瞬で解決するようになった。

 

思考はなにかを手に入れ満たそうする運動を繰り返す。しかし、現実は思考がそのスペースを奪えば奪うほど、繊細な気づきを失う。なぜなら水々しく溶けるような芸術は、思考による最適化の中に、その姿を映し出すことができないからだ。真の現実は、人が考えるほど論理的ではないが、同時に、泣きたくなるほど緻密で論理的である。思考は自己中心的に世界を切り取り、それを全てだと言いたがるが、それは全くの虚像で、純粋な気づきの中にこそ、叡智は宿り、故に、時間の密度の中で、気づきに徹する隙間を許すことが、本当の意味で現実を創造する。

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オカリナの夢

時の魔術師のオカリナは、密林の奥深くに存在する洞窟の中で発見された。その洞窟は、かつて「透明な竪琴」と言われた瞑想の達人の住処であった。彼が瞑想を始めると、半径30kmに存在するあらゆる動物が眠りだした。まるでどこかの次元に同時に誘われたかのように密林には静けさが漂った。彼の瞑想は、長い時で1年間続いた。その1年間密林は静まり返っていたが、動物たちは何も食べず、眠っていただけで、むしろ肉体の若さを取り戻していた。密林の中では、鉱物と生物のありとあらゆる全てが、完全な調和の中で循環していた。

 

オカリナは、彼の友人である鍛冶屋によって作られた。材料の石は、瞑想が行われていた密林の石が使われた。石は鍛冶屋が思った以上に硬く、そしてしなやかだった。鍛冶屋が石に向かってハンマーを下ろそうとすると、不思議にどこを打つべきか、全て手に取るように理解することができた。完成した後には、自分がオカリナを作ったのではなく、石にオカリナを作らされたような感覚だった。作り上げた誇らしさや達成感よりも、ただオカリナを作る体験ができた喜びを感じることができた。そしてオカリナが完成した次の日、鍛冶屋の妻は、念願の女の子の赤ちゃんを出産した。

 

オカリナは密林の中でひたすら光を放っていた。その神秘性に動物達が集まり、鳥が喋り始めた。花は1ヶ月も早く咲き始め、虹が何本も空を渡していた。そうして何百年もオカリナは密林の中でその営みを繰り返していると、密林の中の生命達は、夢の中でオカリナと1つになった。だからオカリナには、密林の全ての生命が宿っている。そしてオカリナはそれを持つ者を静かに待っていた。完全な時期に、完全な足音と共に、完全な呼吸で、時の魔術師は現れた。魔術師はオカリナを手に取り、瞑想を始めた。そして天に静かな声で誓いを立てた。その声を聞き取る者はいなかったが、それは新しい時代が訪れる始まりの合図であると、誰もが直感的に理解した。

 

 新しい時代の幕開けは、個人的に発生する信念体系の破壊と創造である。その信念体系は、誰かに教わることで得るのではなく、自分の内側への観察から導き出される。最初、その音はとても小さいかもしれないが、耳をすませ、静寂を保てば、誰でも聞くことができる。その意味を汲み取った時、この世界の現実に怒りを覚えるかもしれないし、あまりの馬鹿馬鹿しさに笑い転げるかもしれない。あまりに人間は狂った習慣に馴染みすぎてしまった。いずれにしても現実は変わる。朝日は歌う準備を始め、既にオカリナは魔術師の手に渡されている。 

 

永遠の記憶

飛行機は着陸体勢に入り、機体の中は乗客達の気だるい様子が空気を重くしていたが、窓の外に目を向けると、夕暮れのオレンジ色がエネルギッシュに大地を燃やしていた。上空から見た森は、未だに精霊たちが隠れて住んでいそうな神秘性を保っていた。まるで森の領域だけ異なる時間を経験しているようで、再びこの世界に隠された秘密があることを実感した。この世界は分かりきったものだと思えば、そのように見えるし、この世界は神秘的で謎めいていると思えば、やはりそのように見える。それは人間の体験が無限であることを示唆しており、その体験こそは、個人的世界の中で永遠の記憶となるのだろう。